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TopInterview|20xx年未来の働き方 株式会社miraism 川野洋平CEO(前編)

2021.01.08 | George&Company,Inc.

イノベーションを起こすのはまぎれもなく「人」だ。そして“「人」のため”という理由から、イノベーションは起きるのだろう。

『働く「人」と「会社」のリデザインで世の中をより良く。未来をより面白く』というコーポレートミッションを掲げる株式会社miraismのCEO 川野洋平氏は、日本の課題に対するジレンマ解消を目指し、真摯なまでに定量的かつ科学的なアプローチで取り組んでいる。同社は、美容業界に特化した人材エージェント・求人広告サービスの「beauty-mirai事業」、営業代行サービスの「Strategy-Sales事業」、Webコンサルティングサービスの「SANBOU」の3つの事業を柱としている。そして同社最大のミッションは、これらの事業を通じて、顧客の課題を解決する経営コンサルティングサービスの提供である。

ノエビアホールディングス、日本M&Aセンター、エス・エム・エス、エス・エム・エスキャリアで事業本部長を務め、2020年1月に同社を創業した川野洋平氏。創業間もなくして、顧客の課題解決で辣腕を振るい多くの実績を作り上げるとともに、新たな働き方の時代における我々の生き方を冷静且つ俯瞰的な視点でとらえる川野氏は、現場から変革を起こそうと取り組んでいる。自身のキャリアを絶えず「リデザイン」しながら、日本社会の「リデザイン」に向け大志を抱くアントレプレナーは、“未来の働き方”をどのように見つめているのだろうか。

「企業家の特徴は、単に新しいことを行ったり、すでに行われてきたことを新たな方法で行うということ。つまりイノベーションだ。」

ヨーゼフ・A・シュンペーター

青山:ユニークな領域で人材エージェント・求人広告サービスを手掛けると同時に、顧客の経営課題に複眼的視座をもってワンストップで貢献している御社の事業をご紹介ください。

川野洋平氏(以下、川野):弊社の事業は大きく分けると3つになり、美容業界におけるコンサルティングサービス、営業代行サービス、Webコンサルティングサービスで構成されています。

 

 

美容業界ではコスト削減といった経営コンサルティングはもちろん、理美容師に特化した人材エージェント・求人広告サービス「beauty-mirai事業」の展開が特徴的ですね。

もともと、この3つのサービスは企業理念に紐づいているんです。『働く「人」と「会社」のリデザインで世の中をより良く。未来をより面白く』。ただ、言わずもがなですが、「未来」って絶対わかるものではないですよね。

青山:おっしゃる通りですね。

 

 

川野:その前提において、我々はこれから連続的に起こるであろう「不」の解消を行っていきたいと考えているんです。予測できない未来で「何か」起こった時の「不」を、当社の力を使って解決していきたい――それがリデザインにつながります。こうした理念と思いを軸に、理美容師業界の不の側面を解決したり、他業界をふくめて営業リソースや戦略立案が足りなければ支援したり、経営全般における課題に対してコンサルティングすることで、その組織の良さを活かして新しく蘇らせていければ、と考えています。

 

 

青山:これらのサービスを通してワンストップで行うことは価値がありますね。始めるきっかけはどのような所にあったのでしょうか?

川野:“これ”という一つのきっかけではなく、これまでの経験、積み重ねに由来しています。例えば、東日本大震災の時は、私自身も生きることや社会のことをより深く考えました。それをきっかけにノエビアから転職し、日本M&Aセンターや、エス・エム・エス、エス・エム・エスキャリア等で経験を積む道に進みました。それらキャリアを歩む原動力となったのは「もっと社会貢献をしたい」という想いですね。

青山:今回の「起業」は、ご自身のキャリアの強みを完全に活かした形ではない、という印象を受けたのですが、それも社会貢献を意識されたからなのでしょうか?

川野:おっしゃる通りで、前職同様のビジネスであれば実績を出しやすいんでしょうが、それだと「意味はない」と思うんですよね。

青山:つまりは?

川野:独立して社会に貢献するということは、違う質問を立てて、違う答えを出していくことだと思うんです。同じ「問い」に対して、同じ「答え」を再度出すのであれば、その会社で頑張った方が良いと思うんです。違う質問をたてて、違う答えを出していく、それこそが独立することのValueではないでしょうか。これまでにないことで、世の中に社会貢献をする。そこで初めて「意義」ができる。ですから、転職や起業をする際には、これまでと違う業界でやらないとあまり意味がないなと感じていまして。もちろん最初のうちはスキームやフレームはこれまで経験したものしか活用できないので、そういった意味で過去のキャリアの強みは活かしています。

 

|変化するということの意味

 

青山:今、伺った考え方は、もともと川野さんのこれまでのキャリアの中で培われたのでしょうか?

川野:そうですね、昔から異なる業界へ転職をしてきましたし、転職先が同業界であれば解の導き方が異なるだけなので、あまり面白味を感じませんでした。

青山:他業界への転身は勇気が必要だと思うのですが、実は川野さんのバックグラウンドが“起業家の家系”である、といったような依りどころがあるのでしょうか?

川野:両親は公務員と会社員です。ただ、姉が私同様に独立しています。私たち姉弟の代でDNAが変化したのかもしれませんね(笑)。

青山:そうなんですね(笑)

川野:家系ではなく、中高一貫校での体験が強かったかもしれません。当時、宮崎に新設したばかりの学校で、ルールが何もない状況で自ら考えルールを作るという体験をしました。新しい発想を持った同級生が大勢いましたよ。そういった意味では「環境」に依るところはあるのかもしれません。

青山:ライバルの存在や影響を受けた人はいたのでしょうか?

川野:基本的に人と自分を比べない性格なんです。“人と違うことをする”方が、自分にとって好ましいので。

 

|理美容師業界へのフォーカス

 

青山:3つの事業のシナジーや社会貢献への想いが伝わりました。その上で、なぜ理美容師業界へフォーカスしたのでしょう?

 

 

川野:いわずもがなですが、日本は2008年から人口減少のフェーズに入っています。一人当たりの労働生産性の重要度が増してくるという背景があり、前々から「働く」ということには着目していたんです。前職であるエス・エム・エスグループが手掛ける医療介護業界も、今後も伸び続けるでしょう。だとすれば、前職と異なる領域を考えた時、働く人員数、企業の数、採用のリテラシー等を鑑みてファクトを調べた結果、理美容師の業界をやろうと決意しました。業界にはもちろん初めて足を踏み入れたので、ゼロからのサービス展開になりましたね。

青山:川野さんご自身も実際の現場で業務をなさっているのでしょうか?

川野:もちろんです。設立当初はまさにリーンスタートアップでした。弊社の特長としても、社員での“全員野球”を掲げていますし、あくまで「どうしたいか?」に依存するという考えが根底にありますので。私は経営者ではありますが、一個人としても自分の分は自分で稼ぎ、ダイレクトに社会貢献をしたいという思いもあります。弊社では、役職というのはあくまでもピッチャー、キャッチャーといったような役割分担に過ぎないと思っています。

青山:当初、想定していたこととのギャップはございましたか?

川野:ビジネス上の仮説は想像通りでした。流動性の高さ、採用リテラシーが高くない、情報の非対称性が存在しているといったこと等々。そうした中で実際に「難しい」と感じたのは、“ベストな「解」は何なのか”という点でしたね。

青山:つまりはどういうことでしょう?

川野:そもそも有効求人倍率が4倍近くある業界で、美容師は約50万人(理容師は約20万人強)、店舗数は約25万あるんです。労働力の供給が追い付いていないわけですよ。そして実際に始めてみると、求人は想像以上に出てきたんです。求人がありすぎる状態でベストな「解」を提供できているのかどうか、とても迷いました。

青山:アンバランスな状態なんですね。どのように迷いを解消していったのでしょうか?

川野:まず、一つ目は我々のValue(存在価値)は何なのかを考えました。二つ目に意思決定をしていただくことがこの事業の本質である、という考えに行き着いたんです。転職者にとって「この瞬間におけるベストな解」を提供し、意思決定をしていただく。本質的に人は何かを「意思決定」する際に「人」を頼りたくなるメカニズムがあると思うんですね。ですので「意思決定」を支える機能としてのサービスを求めていると思ったんです。情報の非対称性がある中では、なおさら一番良い「解」を提供して欲しいと希望するんです。

青山:おっしゃる通りですね。

川野:転職者にとって解決したい「不」を起点とし、「選択肢を狭め」そして「早いスピードでベストな解をお届けする」、それが我々の価値になると思いました。考え方が決まれば、あとは実行あるのみでしたね。

青山:そうして今日まで活動を続けてこられたんですね。将来的にはこちらの領域をどのように成長させていくのでしょうか?

川野:まずは人員・エリアをスケールさせていきたいと考えています。2~3年以内に全国をカバーしたいですね。中途採用以外では、新卒の領域や就職フェアの開催など。ユーザーのライフチェンジが起きますので、そうした課題の解消にも取り組みたいですね。

青山:その他、例えば業界全体のValueを上げるようなことも考えていらっしゃるのでしょうか?

川野:考えています。これは日本全体の生産性の課題にもつながると思いますが、理美容師業界は中小規模事業者が非常に多く、M&Aが必要な領域だと感じています。構造的な問題なので国策の介入も必要だとは思うのですが、参入障壁が低く、25万もの店舗ができてしまっており、経営効率は決して良いとは言えません。よって現在M&Aのサービスインに向け準備を進めています。尚、現在は株式会社 USEN-NEXT HOLDINGとパートナー契約を結び、主にコスト削減にフォーカスしたコンサルティングサービスを展開しています。

青山:miraism自体の将来的な「絵」はどのように描いているのでしょうか?

川野:理美容業界のドメインをメインに続けていきたいですね。その他の既存事業であるWebコンサルティング、営業代行に関しては、世の中の変化が速く、ナレッジやテクニカルなものが代替されやすくもあるので、少しづつシュリンクしていくかもしれません。将来の環境の変化に合わせて、我々自体も変化する、ということですね。そこが弊社の良さでもありますから。

 

|「選択」と「シェア」の時代

 

青山:変化に柔軟に対応する経営方針はとても重要ですね。10年先、20年先、将来的にmiraismがありたい姿とはどういったものなのでしょうか?

 

川野:これから世の中はどうなりますかという「問い」と同様な質問だと考えた際、「選択」「シェア」がキーワードになるでしょうね。“選択肢の幅が広い”という意味での「選択」であり、副業という言葉がなくなり“当たり前”になる時代では、人材が企業に属するという形態に縛られず、人材の能力を各企業が「シェア」するようになっていくと思うんです。これは、制度のあるなしではなく“当たり前”の流れなんです。弊社でも「副業」は当たり前なので、あえて規定を設けていません。有限な時間の中で自社に全力を尽くすのは当然として、その中で当社の業務に支障をきたしたたり、棄損したりしなければ、自由にやって良いと思うんですよ。そういった意味で弊社は完全フレックスですし、将来的にはそれらの考え方を福利厚生にも反映させる予定です。その時が来たら「miraismに席を置きたい!」と思われる会社であって欲しいですね。

青山:新しい働き方を推進する片や一方では、取り残される人が出てくるかもしれません。そちらについてはどのようにお考えでしょうか?

川野:それに関しては「どっちも“正解”」だと思っているんですよ。二元論ではなく、新しい働き方が主流になり、それ以外が亜流に逆転していくのではないかと予想しています。その時に、当社としては主流に乗っていたい、というだけなんですね。従来の働き方があっても良いと思いますし、なくなるものでもないでしょう。あくまでも、これまでの“川の流れ”が変わっていく、そんなイメージでしょうか。どんな流れの中であれ、自分のミッションに全力を尽くせば良いだけです。新しい働き方だけが尊重される世の中というのも、どこか否定的に受け取ってしまいます。これらはあくまで個人の「選択」であるべきだと思います。

 

|その時にならないと人は動かない

 

青山:川野さん個人として、これからの時代の人材に対してどのような想いをお持ちですか?

川野:そうですね、「自分がどうなりたいかに依存すること」でしょうか。「質問」はつねに自分に向けているべきというか……。簡単に言えば「自分はどうしたいんだっけ?」、それだけで良いのではないでしょうか。これまで、方々からキャリアの相談を受けてきましたが、「目的」から逆算して行動すべきだと思っていますし、そうアドバイスしてきました。それによって“なすべきこと”は明確に異なってきますからね。

青山:そうした考えにはどうやって至ったのでしょうか。周囲からの影響があったのでしょうか?

川野:周囲からの助言やアドバイス等はもちろんありましたが、自分自身で掘り下げて考えてきましたね。例えば「なんで独立したいんだっけ?」「独立=ゴールみたいになっていないかな?」といった具合に。以前から、そうした考えを繰り返していたんですが、なかなか起業にたどり着かなかったのは“火山が噴火していなかった”のかもしれません。その時にならないと人は動かない。実は5年前にも同じようなシチュエーションがあったのですが、行動には移さなかったですからね。

 

|男女平等な社会とは

 

青山:しかるべきシチュエーションというのが人生の節々のタイミングでは重要かもしれませんね。ちなみにですが、女性の活躍や女性の雇用問題等についてはどのようにお考えでしょうか?

川野:以前、雇用におけるジェンダーの社会課題を調査したのですが、社会的な背景として女性の就業率上昇は、右肩上がりの高度経済成長が終わり、世帯年収を支える働き手としての構造的な変化という話がありました。一方で、必ずしも従来の日本社会が形成してきた男性中心の労働形態を希望する女性が多くいるというわけではないんですよね。当たり前ですが。

青山:間違いないでしょうね。

川野:そうした前提に立てば、必ずしも「働くこと」だけが「解」にはならないと思うんですよ。まずはゼロベースで考え、専業主婦としての評価も必要があると思います。

青山:そうですね。

川野:私も育児と家事に参加していますが、労働的にとても大変だと実感しています。もっと評価されるべきです。けれど現状は評価される仕組みがない。ですので、育児や家事というオペレーションに男性を強制的に組み込む必要があると思いますね。働きながら子育てする女性は本当にすごいですから。

青山:とても共感できます。

川野:働く女性に関して言えば、男女を平等に評価する必要を感じています。いまだに男性が優位になっていて、女性が正当に評価されない企業は多いのではないでしょうか。

青山:まだまだ、構造的な課題は多そうですね。